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火災保険に「家財」は必要?
補償対象や家財保険と火災保険の違いなどを解説

リビングルームの家具や家電を示すイラスト。

個人の暮らしに関わる火災保険が補償するのは、「住宅」と「家財」のふたつです。火災や偶然な事故で損害を受けた住まいや生活用品を原状回復させ、普段の暮らしを取り戻す費用を賄うために、これらの補償はあります。

火災保険は原則として住宅および家財の所有者が加入します。持ち家世帯は住宅と家財に、賃貸世帯は家財の火災保険に加入することになります。ここでは、持ち家世帯・賃貸住宅世帯を問わず必要になる家財の火災保険(「家財保険」といわれることもあります)について、詳しく見ていきます。

家財は「生活用の持ちもの」のこと

家財とは、住宅内に収容されている生活用の持ちもののことをいいます。住宅内だけでなく、物置や車庫内に置いてあるものも含まれ、生計を共にする家族の持ちものも対象になります。

改めて家の中を見回せば、たくさんの家財があるものです。冷蔵庫や洗濯機、テレビにソファ、ダイニングセットや棚、棚に収容されている食器や本、DVD、クローゼットに収容されている衣服やバッグ類、子どもの勉強机やベッドと、数えればいくらでもあります。

これらの家財は通常、何年もかけて少しずつ揃えていくものです。かつ、その間に、家財は少しずつ古くなっていきます。そのため「保険をかけるほどでは…」といった声を耳にすることもありますが、私たちの暮らしは実際、これらを利用して成り立っています。これらを一気に失えば、必要最小限のものを取得するだけでも、かなりの支出になるでしょう。

持ち家世帯は、建物だけでなく家財の保険にも加入しているか再度確認しましょう。というのも、住宅ローンを借り入れる時に求められるのは建物の火災保険。家財の火災保険に未加入のケースも見受けられます。

火災保険上の家財に含まれるもの、含まれないものは、おおむね下表のように分類されます。

火災保険の対象となる「家財」とは?
含まれるもの

建物内に収容されている本人や家族の「生活用の持ちもの」

洗濯機や冷蔵庫・テレビなどの電化製品・ベッド・ダイニングセットなどの家具・家族の衣服・キッチン電化製品や調理具・食器・楽器・PCや書籍
自転車・原動機付自転車
その他生活用品など
含まれるが、
申告が必要な場合が
あるもの

生活上必要となるものではない「ぜいたく品」

貴金属・宝石、書画・骨董(こっとう)品、その他美術品など
(1個または1組の価額が30万円を超えるものを指すことが多い※1
含まれないもの 自動車(自動三輪車・自動二輪車含む)、
動植物、通貨、有価証券、預貯金証書※2(通帳・カード含む)、
印紙、切手類、プログラム・データ

住宅の建築後に収容した大抵のものは家財に該当しますが、持ち家でエアコンやガス台などの設備が建物と一体化している場合は「建物」に含まれます。これらの製品であっても、賃貸住宅に入居者が持ち込んだものは「家財」となるなど、ケースにより判断されます。

家財に含まれないものもある

自動車や自動二輪車等は、生活用の持ち物ではありますが、火災保険上の家財には含まれません。これらが損害を受けたときは、自動車保険の車両保険に加入していれば補償を受けられます。

動植物や生活用のお金、通帳、有価証券等も対象外になります。とりわけ注意が必要なのは、タンス預金をしているケース。火災で燃えた紙幣や切手等は補償されません。
ただし、自宅内に保管していた生活用のお金を盗まれたり、通帳やカードを盗まれて預金を引出されたりした場合は「盗難」として一定額まで補償を受けられます。保険金の請求をするときは、警察や銀行に被害の届け出が必要です。

高額な「ぜいたく品」は家財の枠外になることも

ジュエリー、書画や骨董(こっとう)品、美術品など、保険会社の定める基準(多くは1個または1組が30万円)を超える金額のものは、生活用品ではなくぜいたく品とされます。保険会社によっては補償を受けられますが、補償額に上限が設けられ、契約時に申告を要する場合もあります。

ともあれ、ジュエリーや骨董(こっとう)品は取り換えのきく生活用品ではなく、自分にとって唯一無二の価値があるもの。保険の役割は損失を金銭で穴埋めすることであり、これらの価値まではカバーできません。これらを実物で守りたいなら、貸金庫も選択肢になります。

火災保険と家財保険の違い

賃貸住宅入居者向けを中心に「家財保険」という保険が提供されていることがありますが、その中身は家財を補償の対象にした火災保険です。世帯向けの火災保険には、建物を補償の対象にしたものと、建物内に収容されている家財を補償の対象にしたものがあります。このうちの家財を補償の対象にした火災保険を「家財保険」という名称で販売している保険会社があるのです。したがって、家財を対象にした「火災保険」と「家財保険」の商品構成や補償内容が大きく異なるわけではありません。

家財の補償は必要だか、補償金額は暮らしぶりを踏まえ自分で決めてよい

家財の保険金額(補償額)は、所有する家財の再取得に必要な金額をすべて積算し、算出するのが筋です。とはいえ、歯ブラシ一本から家族の衣料品、食器や家具・家電に至るまで、すべてを積算するのは現実的には困難です。

そこで各保険会社は、世帯主と家族構成に応じた家財の参考値(「簡易評価表」)を示しています。アンケート調査によって、保有家財の種類や金額に統計処理を行い、世帯主の年齢や家族構成、住宅の床面積などから所有家財の額を推定したもので、保険会社により金額は異なります。

下表はその一例ですが、独身世帯300万円、30歳前後の夫婦世帯は720万円、40歳前後の夫婦と子ども2人世帯で1,430万円などの金額が示されています。

簡易評価表による参考値
世帯主の年齢 28歳〜32歳 38歳〜42歳 48歳以上
家族構成 独身世帯 300万円
夫婦のみ 720万円 1,250万円 1,500万円
夫婦と子ども2人 900万円 1,430万円 1,680万円
夫婦と子ども3人 990万円 1,520万円 1,770万円
夫婦と大人3人 1,140万円 1,670万円 1,920万円

ソニー損保ウェブサイトより抜粋

ただ、家財の保険金額は、住宅(建物)の保険金額を決めるときとは違いがあります。
住宅の保険金額は、再取得(再建)に必要な金額で設定するのが基本です。再建金額は、自宅建築に使用した材料などを踏まえ、現在の建築費をベースにした算出が可能です。

他方、家財はそれほどかっちりとは決まりません。というのも、私たちの暮らしぶりはそれぞれです。世帯主の年齢や家族構成で、家財の量や質が決まるものでもありません。表内の金額を見て、多いと思う人も少ないと思う人もいるでしょう。上記はあくまでも推定の金額ですから、参考値と捉えればよいものです。家財の補償は必要ですが、自分の暮らしぶりを踏まえ、自分で補償額を決めて構いません。

ただしその際、実態に合った適切な金額を設定することがポイントです。保険金の請求をするときは、被害を受けた家財をリストアップして、どれくらいの損害が生じているか、自ら申告することになります。受けた損害を原状回復するのが火災保険の役割ですから、実態とかけ離れて高い保険金額にしていても、その分は支払われず無駄になってしまいます。逆に少なすぎても原状回復が難しくなるため、保険金額の設定には注意が必要なのです。

適切な保険金額を設定するにはやはり、わが家の実態をある程度把握するのが近道ということ。家財すべては難しくても、主だった家財の再取得金額をざっと積算してみましょう。わが家の家財総額の水準をつかんで現実に近い値に設定できれば、納得感も得られるはずです。

賃貸世帯の人も自分で内容を決められる

賃貸世帯は賃貸借契約のとき、同時に火災保険に加入した人が多いと思います。このとき勧められる多くの保険は、家財の火災保険に、個人賠償責任保険および借家人賠償責任保険等をセットした、2年間で数万円程度の入居者用保険です。

生活を守り、賠償を巡る金銭トラブルを防止する観点からも、入居者の際には火災保険に加入しておきたいもの。ただ、契約時に提示された火災保険に加入しなくてもかまいません。そもそも、特定の事業者の火災保険の加入を賃貸借契約の条件にすることは、独占禁止法上の「抱き合わせ販売」にあたり、禁止されています。「自分で火災保険に入っています」といえば、宅建業者から強く勧められるようなこともないはずです。

賃貸世帯の場合は、契約時に勧められた保険に加入する、あるいは自分で保険に加入する場合でも、以下の点に注意しましょう。

前述したように、家族構成や暮らしぶりにより、家財の適切な保険金額は異なります。しかし、賃貸借契約時の家財の火災保険金額は、占有面積に応じた標準的な金額とされるのが一般的で、万人に適切な金額であるとは限りません。適切な家財の金額に調整してもらいましょう。

加えて、火災保険に付帯されている借家人賠償責任特約、とりわけ個人賠償責任特約については、保険金額が十分かどうかの確認が必要です。個人賠償責任特約は、自転車による加害事故や水漏れによる階下への水濡れ損害など、第三者に与えた損害に対する賠償責任をカバーできる保険です。最低でも1億円の保険金額を設定しておきたいところです。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)