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火災保険料の仕組み 保険料の相場は?
決まり方を解説

家を手で守っているようなイラスト。

事前に比較検討して火災保険を契約する人は少数派かもしれません。住宅ローン手続き時の最終段階で慌てて加入することも多く、支払っている火災保険料が妥当な金額なのか、疑問に感じる人もいるかもしれません。

火災保険料は建物の要素等で異なるため、「相場はいくら」と一概にいえません。ただ、建物の所在地や住宅の構造で、ある程度の火災保険料は決まります。よって、負担水準を大きく変えるのは難しいものの、必要な補償を絞込んだり、保険料の支払方法を変えたりすれば、保険料負担を抑えることは可能です。
以下、火災保険料の決まり方や保険料負担を抑えるポイントを解説します。

保険は「大数の法則」で成り立つ

不測の事態に陥ったときに保険金を受取れれば、家計は危機を免れる可能性があります。

加入者の支払った保険料がまとめられ、それが保険金として不測の事態に陥った人に支払われる。これが保険の基本的な仕組みです。この仕組みが成り立つのは、火災や事故などが全体でどのくらいの確率で起きるかが、前もって予測できることによります。

たとえば個々の被害者にとって、火災は偶然の出来事です。しかし、火災発生データを大量に集めて観察すると、火災が起きる確率は一定値に落ち着いてきます。これを「大数の法則」といい、この定理が火災保険をはじめとした保険商品で利用されています。
近年は、毎年3万7千件前後(※)の火災が起きていて、発生しているこれらの火災をもとに火災保険料が計算されます。
偶然に起きているようにみえる事象も、全体で見れば発生確率が分かります。だからこそ、保険という商品は成り立ちます。

火災保険料が決まるプロセス

私たちが負担する火災保険料は、保険金額(住宅の再調達価額など)に保険料率を乗じて算出されます。保険料率は保険金額に対する保険料の割合のため、高いほど私たちが負担する保険料も高くなります。保険料率は「純保険料率+付加保険料率」で構成されます。

火災保険料率の構成

保険料率:純保険料率(事故時の保険金に充てる)。付加保険料率(保険会社の経費などに充てる)。

損害保険会社(以下、損保会社)は、火災保険料率のうち、付加保険料率を各社がそれぞれ決めることができます。純保険料率を決めるときは、「参考純率」を参照します。
参考純率は、業界団体である損害保険料率算出機構が算出する純保険料率のことです。損害保険料率算出機構は、損保会社から契約や保険金支払いデータなどを大量に収集して、参考純率を算出しています。

参考純率は、損害の状況等に応じ随時見直されます。一般に、災害や事故が増えると保険金の支払いも増えるので、参考純率は上がります。逆に、災害や事故が減れば保険金の支払いも減るので、同様に参考純率は下がります。これを受けて損保会社の保険料率は改定され、私たちが負担する火災保険料が変わります。
風水災の激甚化で、近年は風水災に係る多額の保険金が支払われています。このような背景もあり、この何年かで参考純率は上昇傾向にあります。これを受けて各損保会社の火災保険料率も改定されており、私たちの支払う保険料も何度か見直されています。

一方の付加保険料率は、損保会社の事業上必要な経費などに充てられる部分で、各社がそれぞれ決めます。損保会社の業務形態によって経費は異なるので、経費の内訳も各社それぞれです。

火災保険料は建物の所在地や構造である程度決まる

私たちが実際に負担する保険料は、建物の所在地や建物構造をはじめとした以下の要素等でその多少が決まります。

保険料を決める要素例
要素 保険料が安くなる傾向 保険料が高くなる傾向
建物構造 マンションなど 木造住宅など
築年数 短い 長い
補償額 低い 高い
補償の範囲 狭い 広い
特約 付帯しない 付帯する
地震保険 付帯しない 付帯する
保険料の支払方法 一括払 分割払

一般に、木造住宅よりマンションのほうが、あるいは築年数を重ねた古い住宅よりも新築住宅のほうが、火災などの災害による損害等が大きくなりにくいため保険料は安くなる傾向にあります。同じ構造の住宅でも、延べ床面積の広い家よりも狭い家のほうが建築価格が低い分、保険料は安くなる傾向にあります。自然災害等での損害の生じやすさが異なることから、保険料は都道府県でも異なります。

このように、どこで、どのような建物に住むかによって、負担する保険料はある程度決まります。

他方、契約者の判断によって保険料が決まる要素もあります。
たとえば、風水災、水濡れ、破損・汚損などの「補償」や個人賠償責任特約、類焼損害特約、費用保険などの「特約」の選択の有無です。
これらをどう選択するかは、契約者が決められます。(※)所在地や住まいの状況など、個々の状況を踏まえて決定します。
補償や特約の手厚さは保険料に反映されるので、所在地の災害リスクや暮らし方を踏まえ、補償の要・不要をじっくり検討して、わが家にマッチする過不足ない契約をしましょう。

新築一戸建ての例でみる火災保険料の差

火災保険料は、保険料の支払方法や保険期間の選び方でも負担を抑えることができます。

火災保険料の支払方法には、以下があります。

一般に、同じ保険期間なら、分割払より一括払のほうが保険料は安くなります。たとえば保険期間1年の場合、月払よりも一括払のほうが保険料は安くなります。保険期間5年の場合、保険料の総額が安くなるのは保険期間5年の一括払で、次に安くなるのは年払となります。

また、保険期間が2年以上の長期契約のほうが、保険期間1年で更新を続けるよりも保険料の総額が安くなります。たとえば、保険料を年に1回支払うことは同じでも、保険期間5年で年払とするほうが、保険期間1年の一括払で更新を続けるより保険料が安くなります。
以下は、保険期間1年で更新を続ける場合と保険期間5年で保険料を一括払したときの一戸建て(木造住宅)の保険料例です。(ソニー損保の新ネット火災保険の場合)

保険料を比較すると、

【算出条件】
一戸建て(木造・H構造)、東京都、水災リスク区分:2、保険始期日:2024年10月1日、新築、一括払、免責金額なし
【保険金額】
建物:1,500万円
【補償】
火災等、風災等、水災、水濡れ等、盗難(家財の補償なし)

保険期間5年のほうが、保険料は8,019円(=60,690円ー52,671円)安くなります。(※)

火災保険料を抑えるには「補償と特約・保険期間と支払方法」に着目

以上みてきたように、火災保険料は建物の所在地や構造である程度決まります。ただし、契約者の選択でも保険料は変わってくるので、以下の要素に着目して試算してみるとよいでしょう。

保険料例であげたように、とりわけ保険料が嵩みがちな木造住宅だと、保険料の支払方法の違いで数万円の差が出ることもあります。保険料シミュレーションなどで事前に比較検討して、納得できる保険料を追求してみてください。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)