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火災保険の「雪災」の補償とは?
補償例や支払条件を解説

積もった雪が原因で住宅の屋根が落ちたり、雨どいなどが壊れたりする被害を受けたときは、火災保険で補償を受けられます。雪による被害のリスクは地域により異なりますが、突然の大雪によって想定外の地域で被害が生じることもあります。以下で解説します。

雪による被害は火災保険で補償を受けられる

雪が原因で住宅が損壊したり、家財が破損したりする被害を受けたときは、火災保険の「雪災」で補償を受けられます。
雪災とは、豪雪で積もった雪の重みで生じた事故や、落下等による事故、雪崩で生じた損害を言い、以下のような損害が該当します。

豪雪時に雪によって屋根や壁などが破損、その結果として自宅内に雪が吹込み生じた損害も補償の対象になります。契約に含めていれば、住宅のみならず住宅の付帯設備と位置づけられる門、垣、塀、物置、カーポート等の損害についても補償対象となります。

火災保険では「風災・ひょう災・雪災」をセットで補償するのが一般的です。したがって、契約している火災保険にこれらが付帯されていれば、雪災以外の補償も受けられます。ただし、雪が原因の損害であっても、河川の流域内の積雪が気温の上昇に伴い融けることで発生する、大量の雪融け水が原因で起きる洪水(=融雪洪水)は「水災」で補償されます。

火災共済にも雪害保障があります。保障内容はそれぞれ異なりますが、各団体の規定に応じた保障を受けられます。

2014年には関東でも雪災による被害が発生

普段はあまり雪が降ることがなく、被害が想定されていない地域では、雪の被害になど思い至らないものです。しかし過去には、想定外の被害が関東を中心に起きたこともあります。

2014年に発生した「平成26年2月雪害」では、関東を中心に人的・物的被害が発生しました。最深積雪は山梨県河口湖で143cm、東京都千代田区で27cm、住宅被害は600棟以上に及びました。ただし、住宅被害の程度はそのほとんどが一部損壊であり、被災者生活再建支援制度は適用されませんでした。

「平成26年(2014年)豪雪」における住家の被害状況
住家被害 全壊 半壊 一部損壊 床上浸水 床下浸水
都道府県 山梨・群馬・福島の3県 山梨・東京・栃木など4都県 山梨・東京・群馬など16都県 長野・群馬の2県 長野・福島・群馬など4県
16 46 585 2 30

とりわけよく耳にしたのが、雪の重みで住宅のカーポートや雨どいが破損する等の被害です。普段は雪の被害など思いもよらない都市部でも、こうした被害が見られました。実際、日本損害保険協会によれば、この雪災で保険金支払総額が歴代6位となる総額3,224億円もの損害保険金が支払われています。

カーポートの中の自動車の損害は対象外

前述のように、カーポートなどの住宅付属設備の損害も、火災保険の雪災の補償対象になりますので、覚えておきましょう。
カーポートそのものの損害は火災保険で補償されますが、カーポート落下により受けた自動車の損害は火災保険では補償されません。自動車は火災保険の家財には含まれていません。自動車の損害は、自動車保険の車両保険で補償を受けます。カーポートなどの落下による損害は、車両保険の補償のひとつである「飛来中または落下中の他物との衝突」に該当し、補償を受けられます。

雪災として補償されないケース

以下のような損害は、雪災では補償されません。

雪が原因で起きた住宅の破損で発生した損害ではなく、構造上もとから住宅に隙間があり損害が生じたのであればそれは必然のことです。火災保険は、自然災害や偶然な事故で被った損害をカバーするのがその役割なので、必然に生じる損害は補償の対象になりません。あるいは雪下ろしなど、事故が起きる前にかかった損害防止のための費用も雪災の直接の被害ではないため補償の対象外です。

また、火災保険の対象は建物と家財です。両方の損害に対応するには、それぞれを補償の対象にして火災保険に加入する必要があります。住宅の破損には建物を対象にした火災保険で補償できますが、建物の破損により雪が室内に侵入して家財が損害を受けた場合は補償の対象外です。家財を対象にした火災保険に加入しておく必要があります。

請求期限などの条件に注意

雪災に限らず、火災保険では以下のような場合は補償されません。

  • 老朽化や経年劣化によるもの
  • 損害額が免責金額の範囲内
  • 保険金請求の時効である事故が発生した時の翌日から3年経過してからの請求

火災保険は自然災害や一定の偶然な事故をカバーするのが目的ですから、必然に起きる損害は補償の対象外となります。また、住宅が時間の経過とともに古くなるのは必然ですから、老朽化や経年劣化による損害は保険金支払いの対象になりません。契約者等の故意または重大な過失で生じた損害も保険金支払いの対象外です。

免責金額に達しない損害にも保険金は支払われません。損害保険会社(以下「損保会社」)により異なりますが、免責金額(=自己負担額)は3万円、5万円、10万円などの金額を設定できます。免責金額が高いほど保険料は安くなりますが、損害額から免責金額を差引いた額が保険金となるため、免責金額が高いほど受取れる保険金は少なくなります。
住宅総合保険など、長期の火災保険を契約している場合、損害額が20万円以上にならないと保険金が請求できない場合があります。気になる人は、契約内容を確認してみましょう。

保険金請求の時効にも留意しましょう。保険金請求の権利は、一般に事故が発生した時の翌日から3年で時効にかかります。時間の経過に伴って、事故と損害の因果関係を証明するのも困難になるため、速やかな保険金請求をおすすめします。

保険金請求フローを確認

最後に、一般的な保険金請求フローを確認しておきましょう。

保険金請求フロー

損害保険金の保険金請求フロー図:手順概要:損保会社に事故発生の連絡(片付ける前に、複数の角度・方向から損害状況の写真を撮っておく)。その後、保険金請求書類の受取り(1週間程度、損害状況の立会い確認を要したり、修理業者への連絡が行われることも)。保険金請求資料の作成・提出(保険金請求書、損害状況の写真、修理見積書等)。保険金支払額の確認・承認(1から2週間程度)。保険金受取り(1週間程度)。
  • 大規模災害等の場合、上記の日数より時間がかかることがあります。

損害を受けたら、まずは可能な限り速やかに損保会社に被害の連絡を。損保会社によりますが、近年は電話のみならず、ウェブサイトやLINEから専用のチャットルームで連絡ができます。都合の良い方法で、速やかに連絡しましょう。平時からどのような連絡方法があるのか確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

保険金請求の際に必要になるので、損害状況の写真撮影も忘れずに行いましょう。損害状況の写真を撮っておくと、公的支援を受ける場合にも役立ちます。
損害を受けた箇所を複数の角度、方向、距離から複数枚の写真におさめます。写真の撮り方などがわからないときは、損保会社に連絡して、アドバイスを求めてみてください。

損保会社に損害の連絡をした後は、修理見積書など保険金請求書類のやり取りを、郵送や専用のチャットルームからアップロードすることで行います。その後、保険金支払額が承認されたのち1週間程度で保険金が振込まれます。その際は、請求額と振込まれている保険金の額が合致しているか、念のため最終確認することをおすすめします。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)