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火災保険で「雹(ひょう)」による損害は補償される?
補償例や必要性を解説

突然のひょうで住宅等に損害が生じたときは、火災保険の「ひょう災」として補償を受けられます。ひょうは局地的に降り、予測することも難しいため、どのような場所でも被害にあうおそれがあります。以下で解説します。

火災保険でひょうによる損害は補償される

火災保険は火災のほか、自然災害や偶然に起きた一定の事故で生じた損害でも補償を受けられます。ひょうによって建物や家財が損害を受けたときは、「ひょう災」として補償を受けられます。

ひょう災とは

ひょう災とは、ひょうにより生じた損害を指します。ひょうとは、積乱雲から降る直径5o以上の氷塊のことで、時にはソフトボールくらいの大きさになることもあります。なお、直径5o未満のものはあられと呼びます。
氷の塊ですから破壊力は抜群です。ひょうに見舞われれば、以下のような損害が起きることもあります。

  • ひょうが天窓のガラスに当たり、割れた
  • ひょうにより車のガレージの屋根に穴が開いた
  • ひょうにより屋根瓦が割れた
  • ひょうが太陽光パネルに当たり、破損した

自家用車用ガレージも補償対象

自家用車の自宅ガレージは、住宅の付属設備として補償対象になります。
また、太陽光パネルは住宅に付加している(建物と一体性がある)場合に補償対象となりますが、補償を受けるための前提として、火災保険の補償対象に太陽光パネルが含まれていることが必要です。既存住宅に後から太陽光パネルを設置した場合は、太陽光パネル分の費用を建物の保険金額に追加する等の手続きを行う必要があります。損害保険会社(以下「損保会社」)によっては、建物ではなく家財の補償対象となる場合もあるため、まずは損保会社に連絡して確認することをおすすめします。

家財も補償対象にできる

建物だけでなく、ひょうで建物が破損したことで家財が損害を受ける場合もあります。

  • ひょうが天窓を突き破り、室内の家具や電化製品が破損した
  • ひょうで窓ガラスが割れて室内に吹き込み、テレビの液晶パネルが破損した

家財も補償の対象としている場合、ひょうで建物が破損し生じた家財の損害も補償対象になります。ただし、窓を閉め忘れて出かけるなどし、その間にひょうが室内に吹き込み、家財が損害を受けた場合は補償の対象になりません。閉め忘れた窓からひょうが吹き込むのは偶然の事故ではなく、必然に起きることだからです。生活上のちょっとした不注意で保険金を受取れないことがないよう、火災保険の注意点としてしっかりおさえておきましょう。

自動車は自動車保険に車両保険を付帯する必要がある

建物や家財を補償対象とした火災保険に、それぞれひょう災の補償を付帯していれば、いずれの損害もカバーできます。ただし、ひょうにより自動車の車体が傷つくなどの損害を受けた場合、自動車は家財に含まれないため火災保険では補償されません。自動車の損害は、自動車保険に車両保険を付帯してカバーしましょう。

ひょうは短い時間で局地的に降り、予測が難しいとも言われます。どのような場所であってもひょうによる被害を受けるおそれがあり、建物や家財に思わぬ損害が生じるおそれは誰にでもあるでしょう。

自然災害による損害には火災保険で備えを

地震や水災などの自然災害で住宅に損害が生じたときには公的支援がありますが、ひょうにより損害が生じても、公的支援を受けるのは難しいかもしれません。

被災時の代表的な公的支援に、住宅全壊時等に最大300万円の支援金を給付する「被災者生活再建支援制度」があります。この支援制度では、1市区町村で10世帯以上の住宅が全壊することなどが適用要件となっています。広域災害が主な対象となることから、局地的に降るひょうで10世帯以上全壊の適用要件を満たすのは難しいかもしれません。また、ひょうで住宅が全壊に至るというのもまた、考えにくいところです。
しかし、ひょうにより屋根に穴が開いたり、太陽光パネルが破損したりすれば、まとまった修繕費が必要になることもあります。こうしたとき火災保険で保険金を受取ることができれば、滞りなく住宅の修繕ができ、家計への負担を抑えられるでしょう。

ひょうによる被害はめったに起こらないかもしれませんが、公的支援の対象になりにくく、かつ手元のお金で賄うことが難しい損害を受けるおそれもあることから、火災保険で備えるのが合理的と言えます。

火災保険の「風災・ひょう災・雪災」のセット補償

ひょう災は、火災保険では単独の補償ではなく「風災・ひょう災・雪災」と、3つをまとめた補償として付帯する形となっていることが多いです。風災は台風や暴風による損害、雪災は豪雪や雪崩による損害をそれぞれカバーできます。

火災保険の補償内容
補償項目 補償内容
偶然な事故 火災 火災による損害
破裂・爆発 気体または蒸気の急激な膨張を伴う破裂などの損害
水濡れ 給排水設備の事故または他の戸室で生じた漏水等による損害
物体の落下・衝突 建物外部からの物体の落下や衝突、接触、倒壊等による損害
騒擾(そうじょう) 騒擾及びこれに類似の集団行動又は労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為による損害
盗難 盗難によって生じた盗取、損傷、汚損による損害
自然災害 落雷 落雷による損害
風災 台風・旋風・竜巻・暴風等による損害
ひょう災 ひょうによる損害
雪災 豪雪の際の雪の重みや落下による事故、雪崩による損害
水災 台風・暴風雨・豪雨などによる洪水や融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによる損害

損保会社によりますが、火災保険では3万円、5万円、10万円などといった「免責金額(=自己負担額)」を設定できます。損害を受けたときは、免責金額を超えた金額が保険金として支払われます。免責金額を高くするほど受取れる保険金は少なくなりますが、負担する保険料は安くなります。

火災保険の風災・ひょう災・雪災で補償されないケース

ひょうにより屋根に痕がついたものの、軽微なへこみなどで屋根の機能に支障がないときは、保険金支払いの対象外となることがあります。
また、風災、ひょう災、雪災で生じた損害について、その損害の金額が一定金額以上のときのみ補償される火災保険もあります。こうしたタイプの火災保険では、たとえば認定損害額が20万円未満など、一定金額未満の損害では保険金が支払われません。他方、認定損害額が20万円以上になると、損害額の全額の保険金が支払われる仕組みとなっており、自己負担額が差引かれて保険金が支払われる免責金額とは異なります。
このタイプの火災保険は、かつて販売されていた火災保険の一部で適用されていました。よって、以前に住宅ローン契約とともに、長期の火災保険に加入した人は、こうしたタイプの火災保険に該当するかもしれません。気になる人は、折を見て自分の火災保険がどのような保険金の支払われ方をするのか、確認しておくといいでしょう。いざというとき慌てずに済みます。

ひょう災で保険金を請求するときは

ひょう災で住宅や家財に損害が生じたら、片付ける前にまず損害状況の写真を撮りましょう。損害の証拠をしっかり残しておくことで、スムーズに保険金請求の手続きが進められます。遠景と近景のそれぞれを撮り、どのような損害が生じているのかがよくわかるように、複数の方向から損害状況を撮影します。
損害が生じた際は、可能な限り速やかに損保会社に連絡して、保険金請求の手続きをするようにしましょう。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)