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火災保険で「竜巻」による損害は補償される?
補償例や必要性を解説

竜巻は、短時間のうちに猛スピードで移動し、局地的に甚大な被害をもたらすことがある災害です。竜巻により住宅等に損害が生じたときは、「風災」として火災保険で補償を受けられます。以下で解説します。

竜巻による損害は火災保険で補償を受けられる

竜巻は、「発達した積乱雲に伴う強い上昇気流により発生する激しい渦巻」(「首相官邸ホームページ」より)で、ときに甚大な被害をもたらすことがあります。短い時間のうちに自動車以上の移動スピードになる場合があり、威力は建物を倒壊させたり自動車をひっくり返したりするほど。竜巻に巻上げられた様々なものが猛スピードで飛んでくることがあり、その場合、堅固なマンションであっても被害を避けられないかもしれません。住宅のみならず、住宅が破損して室内まで被害を受けることもあります。
たとえば、竜巻による損害として以下があげられます。

竜巻で、建物や家財にこのような損害を受けたときは、火災保険の「風災」として補償を受けられます。火災保険では火災のみならず、竜巻といった風災や水災などの自然災害、偶然起きた事故などで被った損害をカバーできます。「風災」は単独で火災保険に付帯されるのではなく、「ひょう災」、「雪災」とともに3つの補償がひとまとまりで付帯されていることが多いです。

火災保険の補償内容
補償項目 補償内容
偶然な事故 火災 火災による損害
破裂・爆発 気体または蒸気の急激な膨張を伴う破裂などの損害
水濡れ 給排水設備の事故または他の戸室で生じた漏水等による損害
物体の落下・衝突 建物外部からの物体の落下や衝突、接触、倒壊等による損害
騒擾(そうじょう) 騒擾及びこれに類似の集団行動又は労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為による損害
盗難 盗難によって生じた盗取、損傷、汚損による損害
自然災害 落雷 落雷による損害
風災 台風・旋風・竜巻・暴風等による損害
ひょう災 ひょうによる損害
雪災 豪雪の際の雪の重みや落下による事故、雪崩による損害
水災 台風・暴風雨・豪雨などによる洪水や融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによる損害

竜巻による損害を補償する風災とは

風災とは、竜巻をはじめ、台風、旋風、暴風等で被った損害を指します。風そのもので建物等が破損した場合のほか、風によってモノが飛ばされ、建物等にぶつかることで破損した場合も補償対象になります。
ただし、建物が破損したことによってではなく、老朽化や劣化による建物の隙間からの吹き込み損害や、窓を閉め忘れたために受けた竜巻による損害は補償の対象外です。

建物と家財の両方を補償の対象として風災補償を付帯していれば、風による建物の損害のみならず、建物の破損によって室内に収容されている家財が損害を受けた場合についても補償されます。ただし自動車が受けた損害は、火災保険ではなく自動車保険に車両保険を付帯していれば補償を受けられます。

竜巻による損害被害で補償されないケース

損害保険会社によりますが、火災保険では、3万円、5万円、10万円などといった「免責金額(=自己負担額)」を設定できます。受取れる保険金は、損害額から免責金額を差引いた金額になります。免責金額以下の損害額だと保険金は支払われません。
また、竜巻などの「風災」について、20万円以上など認定損害額が一定額以上になったときのみ保険金が支払われるタイプの火災保険もあります。たとえば、認定損害額が20万円未満など、一定金額未満の損害では保険金が支払われませんが、20万円以上になると損害額の全額の保険金が支払われるといった仕組みです。このタイプの保険は、かつて販売されていた火災保険の一部で適用されていました。住宅ローンと同時に契約した長期契約の火災保険で見られることがあります。損害を受けたときに慌てることのないよう、契約内容を確認しておくと安心です。

2012年には茨城県つくば市を中心に竜巻被害が発生

竜巻と言うと、アメリカで甚大な被害を及ぼしているトルネードを想起する方もいるでしょう。しかし日本でも、竜巻により多数の世帯に被害が発生したことがあります。

2012年5月に茨城県つくば市付近で発生した竜巻では、茨城県および栃木県で全壊した住宅が89棟、半壊および一部損壊住宅が1,175棟にものぼるなどの被害が発生しました。住家被害のみならず人的被害もでています。

首相官邸ホームページに掲載されている被災当時のつくば市の写真を見ると、共同住宅にもかなりの被害が生じていることが確認できます。竜巻の勢いがどれほど激しいものであったかがよくわかります。

平成24年5月6日茨城県つくば市
写真:竜巻の災害後の様子

特に被害が大きかった茨城県のつくば市や栃木県の真岡市など全7市町に災害救助法が適用され、被災者の保護が図られました。また、多数の住宅全壊被害が生じたつくば市には、最大300万円の支援金が支払われる被災者生活再建支援制度が適用されました。

竜巻を含む自然災害の被災者生活再建支援金は最大300万円

「被災者生活再建支援金」の額
基礎支援金
(被害程度)
加算支援金
(再建方法)
合計
全壊・解体・
長期避難
100万円 建設・購入 200万円 300万円
補修 100万円 200万円
賃借(除、公営住宅) 50万円 150万円
大規模半壊 50万円 建設・購入 200万円 250万円
補修 100万円 150万円
賃借(除、公営住宅) 50万円 100万円
中規模半壊 建設・購入 100万円 100万円
補修 50万円 50万円
賃借(除、公営住宅) 25万円 25万円

被災者生活再建支援制度は、被災後に支給される主な公的支援のひとつです。自然災害で住宅に著しい被害を受けた世帯に生活再建を支援するため最大300万円が支給されます。10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等に制度が適用され、そこに居住する被災者が支援金を受取れます。

支援制度の対象になるのは、制度適用された市町村の住宅が全壊、大規模半壊、中規模半壊となった世帯です。支援金は住宅の被害程度で決まる「基礎支援金」、住宅の再建方法で決まる「加算支援金」の2段階で支払われます。住宅全壊の場合、基礎支援金100万円、その後住宅を再建すると200万円の最大300万円が支給されます。持ち家世帯のみならず、賃貸世帯も居住している住宅の損害に応じて支援金を受取れます。

竜巻による損害被害には火災保険で備えを

被災者生活再建支援金では、住宅全壊の被害にあい、その後住宅を再建するという経済的負担が生じた場合でも最大300万円です。住宅ローン返済中の世帯や、年金暮らしの世帯には、支援金のみでの生活再建には困難が伴うおそれがあります。

また、損害程度が中規模半壊までに至らないと支援制度の対象にはなりません。2012年5月に発生した竜巻被害では、合計1,000棟近い住家が一部損壊の被害を受けていますが、これらの世帯は支援制度の対象にはならないのです。
そもそも、1市町村に10世帯以上の住宅全壊世帯が生じていなければ、制度は適用されません。当該竜巻では複数の市町で住宅全壊の被害が発生していますが、制度が適用されたのはつくば市のみです。よってつくば市の住宅全壊世帯は支援制度の対象になりますが、他の市町に住んでいる住宅全壊世帯は対象になりません。ただし、市町村によっては、独自の被災者支援策を設けていることもあります。

自然災害で住宅に損害を受けたときの公的支援はあるものの、その被害が一定の要件を満たさないと支援が受けられないことがあるのです。被害額が大きくなれば、手元のお金で修繕費を賄うことも難しくなるでしょう。

思わぬ竜巻被害を受けた後、速やかに暮しを元に戻すことができるよう、契約する火災保険に「風災」の補償が付帯されているか、折を見て確認しておくことをおすすめします。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)